法定遺言事項と付言事項

法定遺言事項と付言事項

法定遺言事項と付言事項


遺言書には、記載することで法律上の効力が生じる「法定遺言事項」と、家族への想いや遺言を作成した理由などを伝える「付言事項」があります。



この2つは役割が異なりますが、どちらも遺言書を作成するうえで重要です。



法的な効果を確実に生じさせる部分と、ご本人の気持ちを残された家族へ伝える部分を分けて考えることで、より分かりやすい遺言書を作成することができます。



1.法定遺言事項とは



法定遺言事項とは、遺言書に記載することによって法律上の効力が認められる事項です。



遺言書に何を書いてもすべて法的な効力が生じるわけではなく、法律上、遺言によって定めることが認められている事項について効力が生じます。



代表的なものとして、次のような事項があります。


  • 相続分の指定
  • 遺産分割方法の指定
  • 遺贈
  • 遺言執行者の指定
  • 遺産分割の禁止
  • 遺留分侵害額の負担方法に関する指定
  • 認知
  • 未成年後見人・未成年後見監督人の指定



実際にどの事項を遺言書へ記載する必要があるかは、家族構成や財産内容、ご本人の希望によって異なります。


2.付言事項とは



付言事項とは、遺言書の中に記載する、ご家族へのメッセージや遺言を作成した理由などの部分です。



例えば、次のような内容を記載することがあります。


  • 家族への感謝の言葉
  • 特定の相続人に多く財産を承継させる理由
  • 家族に今後も仲良くしてほしいという希望
  • 事業を特定の後継者へ承継させたい理由
  • 葬儀や供養についての希望



付言事項そのものには、原則として相続人を法的に拘束する効力はありません。



しかし、ご本人がなぜそのような遺言内容にしたのかを家族へ伝えることで、遺言内容への理解につながることがあります。


3.法的効力がなくても付言事項には意味があります



遺言書に「長男に自宅を相続させる」とだけ記載されている場合、他の相続人から見ると、なぜそのような財産配分にしたのか分からないことがあります。



その理由を付言事項として説明しておくことで、ご本人の考えや家族への想いを伝えることができます。



例えば、長男が長年家業を手伝ってきたため事業用財産を承継させたい場合や、同居して介護をしてくれた家族へ多く財産を残したい場合など、その背景を記載することがあります。



もちろん、付言事項を記載すれば必ず相続人全員が納得するとは限りません。



それでも、ご本人の意思や理由を何も残さない場合と比べて、遺言内容を理解してもらうための一つの手段となります。


4.事業承継における付言事項



会社経営者や個人事業主の場合には、株式や事業用財産を特定の後継者へ集中して承継させたいと考えることがあります。



その場合、単に「長男に株式を相続させる」とだけ記載するのではなく、なぜ長男を後継者としたのか、事業を継続するために株式を集中させる必要がある理由などを付言事項に記載することがあります。



事業承継は相続人間の公平だけでなく、会社の経営や従業員の生活にも関係するため、ご本人の考えを丁寧に残しておくことが重要です。


5.付言事項と遺留分は別の問題です



付言事項で「遺留分を請求しないでほしい」と希望を書いたとしても、それだけで相続人の遺留分侵害額請求権を失わせることはできません。



兄弟姉妹以外の一定の相続人には遺留分が認められているため、遺留分を侵害する内容の遺言を作成する場合には、相続開始後に遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。



付言事項によってご本人の希望を伝えることと、法律上の遺留分への対応は分けて検討する必要があります。


6.付言事項に書けば何でも実現できるわけではありません



付言事項は、ご本人の希望や想いを伝えるためのものです。



例えば、葬儀の方法、家族へのお願い、ペットの世話などについて希望を書くことはできますが、それだけで相手方に法律上の義務を負わせることができるとは限りません。



確実に法律上の効果を生じさせる必要がある事項については、遺言事項として適切に記載したり、必要に応じて別途契約を締結したりすることを検討します。


7.付言事項は内容と表現が大切です



付言事項は自由に書くことができますが、内容によってはかえって家族の感情を害してしまう可能性もあります。



特定の家族を強く非難したり、感情的な表現を多く用いたりするよりも、遺言内容を決めた理由や感謝の気持ちを落ち着いた表現で伝える方がよい場合があります。



誰に何を伝えたいのかを整理し、残された家族が読むことを考えて文章を作成することが大切です。


8.遺言書は法的内容と想いの両方を整理します



遺言書で最も重要なのは、ご本人の希望する財産承継が法律上適切に実現できるようにすることです。



そのうえで、なぜそのような内容にしたのか、家族へどのような想いを残したいのかを付言事項に記載することで、ご本人らしい遺言書を作成することができます。



法定遺言事項と付言事項は役割が異なりますので、それぞれの目的を理解して作成することが重要です。


9.大府市周辺の遺言書・付言事項のご相談



ななつぼし行政書士事務所では、大府市を中心に、公正証書遺言、自筆証書遺言、付言事項などの遺言書作成についてご相談を承っております。



財産内容や家族関係だけでなく、ご本人がなぜその財産配分を希望するのか、家族へどのような想いを伝えたいのかについても丁寧にお聞きしながら遺言内容を整理します。



「財産の分け方だけでなく家族に気持ちを残したい」「特定の相続人に多く財産を残す理由を説明しておきたい」といった場合もご相談ください。